Point(結論)
家で介護をするときに最も大変なのは、「身体的負担と精神的負担が同時にかかり続けること」、そしてその負担を「一人で抱え込んでしまいやすいこと」です。
さらに、介護する人自身の生活リズムが乱れたり経済的な負担が増えたりするなど、周辺の状況も含めて総合的に大きなストレス要因となります。結果として、在宅介護を続けるうちに、介護する側が心身ともに疲弊してしまうことが少なくありません。
Reason(理由)
なぜ、在宅介護では大きな負担がかかりやすいのでしょうか。理由としては主に以下のポイントが挙げられます。
身体的負担が大きい
- 在宅での要介護者の移動や排泄介助、着替えや入浴補助などは、介護する人が体力と労力を大きく使う場面が多く発生します。
- とくに腰痛をはじめとする身体的トラブルを抱える介護者は非常に多く、さらに自宅では介護スペースが限られているため、思うように身体の向きを変えられないなど環境面での制約も加わります。
精神的負担や孤立感
- 家族であっても、介護となると関係性は大きく変化します。
- 「昔はできていたことができなくなる」「同じことを何度も言われてしまう」など、要介護者本人も辛い思いをする一方で、介護を担う側も「こんなはずじゃなかった」「うまくケアできない」と自責の念に駆られる場面が多いのです。
- さらに、夜間の見守りなどを続けるうちに慢性的な寝不足やストレスが蓄積し、誰にも相談できずに孤立してしまうケースも少なくありません。
生活リズムの乱れと時間の不足
- 仕事や家事、育児などとの両立が必要な場合には、どうしても介護時間をひねり出す必要があります。
- 通院の付き添いや日中のケアだけでなく、夜中の見守りや急なトラブルへの対応が重なることで、介護者自身の休む時間が削られていきます。これにより、体力的にも精神的にも追い詰められやすくなります。
金銭的負担の増大
- 介護ベッドや車椅子、エアマットレスなど、福祉用具をそろえるためにはある程度の初期費用がかかります。介護保険のサービスを利用する場合でも、一定の自己負担が必要です。
- また、リフォームが必要になれば大きな出費もあり得ます。要介護期間は短いとは限らず、長期にわたる場合、家計そのものへの影響も大きくなります。
専門知識や技術の不足
- 特に認知症ケアでは、専門的なコミュニケーション方法を知らないことで、無意識のうちに要介護者を混乱させたり、双方がイライラを募らせたりしてしまいます。
- また、皮膚の状態管理や誤嚥防止など、医学的な知識が求められる場合もあるので、介護者が独学で習得するのは容易ではありません。
家族間の意見対立
- 介護にかかる負担をどう分担するか、また地域のサービスをどう活用するかなどを家族全員で話し合う必要があります。
- しかし、離れて暮らす兄弟がいたり、各々が仕事を持っていたりすると、話し合いがうまく進まなかったり、介護の実態を一番担う人だけに負担が集中しがちです。
- こうした状況から家族間のトラブルが生じ、心理的負担を倍増させることもあります。
Evidence/Example(具体的根拠・事例)
在宅介護にまつわる実例を見てみると、以下のようなケースが報告されています。
- 腰痛が悪化し、介護者自身が通院やリハビリを必要とするようになった
物理的に要介護者を支える場面が多いほど、介護する人の身体への負担は蓄積しやすく、日常生活にも支障が出てしまう。 - 夜間の見守りで寝不足が続き、判断力が低下してミスが増える
日中の仕事に支障が出るばかりか、介護の質自体も下がってしまうことで、要介護者にも悪影響が及ぶ。 - 家族から十分な協力を得られず、ひとりで抱え込み「介護うつ」の一歩手前に
相談相手がおらず、気軽に愚痴や不安を共有できる人がいないことで、精神的なストレスが爆発してしまう。結果的に介護を続けるのが困難になる場合もある。 - 介護費用の増大で家計が逼迫し、家族関係にも影響
収入が減る一方、出費は増えるという状況が続くと家族全体の暮らしが圧迫され、精神的余裕をなくしてしまう。
こうした事例は、どれも“在宅介護あるある”とも言われるようなものばかりで、家での介護がいかに多面的に大変であるかがうかがえます。
Point(まとめ)
最後に、在宅介護の大変さをまとめると次のようになります。
- 身体的・精神的負担が連続的にかかりやすい
- 介護時間や生活リズムの調整に苦労し、休息がとりにくい
- 経済的な負担が大きくなりやすい
- 知識不足や家族間の意見対立でストレスが増幅する
これらを解決するためには、介護保険サービスの積極的な活用や地域包括支援センターなど専門家への相談、また家族間での具体的な話し合いが欠かせません。負担を一人で抱えず、周囲の力を借りることで、少しでもストレスを分散し、在宅介護の継続を目指すことが重要です。さらに、介護者自身のケア(レスパイトケアを利用した休養、専門家への相談、心身の健康維持)も心がけましょう。
多くの場合、在宅介護は時間をかけて続いていきます。最初から完璧な介護を目指すのではなく、試行錯誤を重ねながら必要なサービスを組み合わせ、家族や地域が協力し合える仕組みをつくることが鍵となります。周りと協力しながら無理なく介護を続けることで、介護される側だけでなく、する側も健康や生活を損なわずに済むのです。
在宅介護がもたらす苦労は確かに大きいものの、家で家族と過ごす時間が増えることで、これまで気づかなかった思い出や絆を改めて感じられる瞬間も生まれます。その一方で「自分一人だけが頑張らなければ」と思い込みすぎると、心身が限界を迎えてしまう危険性もあります。
したがって、在宅介護を続けるうえでは、適切なサポートを得て“長く続ける”ことを第一に考え、無理をせず、悩みを抱え込まないことが大切です。